2022.08.16

【Vol.4】家族への想い

 

会社の経営が軌道に乗り始めたころ、私は結婚しました。

相手は、婚活パーティーで知り合った人。看護師をやっていました。

お互い「もう帰りたいなあ」と思っていたとき、隣の椅子に座ったのがきっかけです。

 

その婚活パーティーは、経営者限定のパーティーでした。

男性は全員経営者、そして女性は、その経営者たちと結婚したいと思っている独身女性。

私は後輩に誘われて参加したのですが、実は途中から、気分が悪くなってしまいました。

そこに集まっている人たちの〝ギラギラ〟に当てられたのです。

 

特に、女性たちからの質問が強烈でした。

「どこに住んでいるんですか?」「車は何に乗っているの?」「年収はいくらですか?」

経営者とはいえ、初対面の男性に「そんなこと聞くか?」という質問を投げてくるのです。

その質問の背後に、「金持ちの経営者をつかまえたい」というドロッとした欲望が見えました。

だから気分が悪くなったのです。

 

そんなとき、ふと会場の後のほうで、つまらなそうに座っている一人の女性が見えました。

私と同じく、知り合いに誘われて婚活パーティーに参加したものの、人混みと男女の欲に嫌気がさしていたのです。

話してみると、会場にいた女性の中で、一番常識的な会話ができました。

住んでいる場所も、乗っている車も、年収も話題にはなりませんでした。ごく普通に会話できたのです。

それから何度か会い、付き合うようになりました。

そして、子どもができたのを機に、結婚することにしました。

 

結婚式

 

ところが、結婚していきなり、妻に離婚届を突きつけられるという事件が起きました。

「あんたのことを信用できない」と言うのです。

私は一度、仕事と称してジェットスキーに行ったことがあります。それがばれたとき、妻に激怒されました。

遊んでいたことよりもむしろ、仕事だと嘘をついて行ったことが許せなかったのです。

 

妻の疑いは、Facebookにまで及びました。

独身時代につながったFacebook友達の女性を、全員削除する羽目になりました。

「夜の仕事をしている女性と、連絡をとるのではないか」と疑われたのです。

 

そのころの私は、従業員を新たに雇い始め、かなり忙しくしていました。家庭のことは女性がするもんや、と思っていました。

だから、子どもができた女性の心理をまったく理解しようとしていなかった。いま考えると、妻が腹を立てるのは当たり前だったかもしれません。

 

妻は、私に早く帰ってきてほしかったのだと思います。でも、それを素直に言える性格ではありませんでした。

帰宅した私に、「あんたは小さいコミュニテイの王様」「お金しか与えてくれない人」「世界が狭い」と、まくしたてたこともあります。

さすがにカチンときました。

でも、よくよく考えると、妻の言っていることは、全部当たっていました。

 

小さなコミュニティの王様=小さい会社の社長に過ぎない

お金しか与えてくれない人=家のことをかえりみてくれない人

世界が狭い=仕事のことしか見えていない

 

「妻には、私に見えないものが見えているのかもしれない」

そう感じました。

思い返せば、妻には以前から一貫性がありました。

ひどい言葉でののしってくることはあっても、それを「うちのだんなはこうで、ああで」と他言することは一切ありませんでした。

私に対する罵詈雑言は、他人には言わない。私にだけ言ってくるところが一貫していました。

 

私よりも、二手、三手先を見ているのではないかと思ったこともあります。

あるとき、仕事の付き合いで女性といっしょに飲んだことを正直に言ったら、妻に激怒され、「夜は外出禁止」を言い渡されました。

お酒の接待が一切できなくなるので、正直、売上が落ちるのではないかと思いましたが、フタを開けてみたら、売上にはまったく影響がありませんでした。

 

「やっぱり、自分には見えていないものが、妻には見えているかもしれない…。ちゃんと言うこと聞かなあかんな」

そう思いました。以来、夜はまっすぐ帰宅しています。

 

子どもたち

 

いま。二人の子どもの父親として、カッコいい生き方をしたいと思っています。

子どもたちには、自分の考えをはっきり言えるようになってほしい、自立した大人になってほしいと思っています。

 

「自立」は、いまの日本が最も遅れているところだと思います。

私の子ども時代は、決してほめられたものではありませんでした。横道にそれたこともあります。でも、自立を目指して生きてきた人生を、後悔はしていません。

 

先日、経営者仲間の紹介で、アチーブメントという会社の能力開発研修を受けました。そこで私は、家族への想いを改めて実感することができました。

研修から戻ったとき、私は妻にこう言いました。

「あの研修を極めたら、きっと僕は、あなたが求めている理想の夫になれる」

妻はひと言、こう言いました。

「よかったやん」

 

妻が求めているのは、「安心」です。

ちょいちょい嘘をついたり、ごまかしたりしている私を見て、妻は安心できないのだと思います。私に「不安しかない」と訴えてきたこともあります。

でも、それによって、私は「誠実であること」の大切さに気づけました。

 

世の成功者たちの多くは、「なぜ成功できたのか」という質問に、こう答えています。

「誠実だったから」。

商売とは狐と狸の化かし合いだと思っていた私には、新鮮な気づきでした。

いまは、家族にも、仕事にも誠実であろうと努めています。

 

自分の会社を持って5年。

当初は「10年で年商10億円」が最大の目標でした。

でも、それを5年で成し遂げることができました。

そうなって、思うようになりました。

「世の中のお役に立ちたい」

(続く)

 

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