2026.05.25

塩害対策に有効なコンクリートとは?原因と5つの方法を解説

「コンクリートの塩害対策はどう進めればいいんだろう?」

こういった疑問や不安に応える記事です。

当サイト「ADJUST株式会社」は、土木工事を請け負うプロ集団です。

この記事でわかること

  • コンクリートに塩害が発生する原因とメカニズム
  • 海岸からの距離や土木学会・国土交通省が定める基準
  • 塩害対策で取り組みたい5つの具体的な方法

結論からいうと、コンクリートの塩害対策は「塩化物イオンの侵入をいかに防ぐか」がカギになります。

セメントの種類、水セメント比、かぶり厚さ、混和剤、表面塗装の5つを組み合わせることで、塩害に強い構造物をつくれます。

「沿岸部の現場で、どこまで対策を強化すべきか判断がつかない…」と悩む方もいるかもしれませんが、基準を押さえれば適切に判断できるようになるでしょう。

本記事では、塩害のメカニズムから具体的な対策方法、補修工法までを土木のプロがわかりやすく解説します。

塩害対策の知識を実務に活かしたい方は、最後までご覧ください。

コンクリートに塩害が発生する原因とメカニズム

塩害は、コンクリート中に侵入した塩化物イオンが鉄筋を腐食させ、構造物の劣化を引き起こす現象です。

なぜ塩分がコンクリートを劣化させるのか、メカニズムを理解しておくと適切な対策を選びやすくなります。

ここでは、以下のコンクリート塩害の発生原因とメカニズムを紹介します。

  1. 塩化物イオンが侵入する2つのルート
  2. 鉄筋の不動態被膜が破壊される仕組み
  3. 鉄筋の腐食が構造物を劣化させる流れ

それでは、詳しく解説します。

1.塩化物イオンが侵入する2つのルート

コンクリートに塩化物イオンが侵入するルートは、大きく分けて「内在塩化物イオン」と「外来塩化物イオン」の2つです。

内在塩化物イオンは、海砂・混和剤・セメント・練混ぜ水などに最初から含まれている塩分を指します。

一方の外来塩化物イオンは、海水飛沫や飛来塩分、凍結防止剤などコンクリート表面から徐々に浸透してくる塩分です。

沿岸部の構造物だけでなく、凍結防止剤を散布する寒冷地の橋梁や道路でも塩害は起こります。

「海の近くではないから塩害リスクは低い」と油断せず、現場環境を正しく把握することが大切でしょう。

2.鉄筋の不動態被膜が破壊される仕組み

通常、コンクリート内部はpH12〜13の強アルカリ性に保たれており、鉄筋の表面には「不動態被膜」と呼ばれる保護膜が形成されています。

不動態被膜があるおかげで、鉄筋はコンクリート内で錆びずに守られている状態です。

しかし、塩化物イオンが一定量を超えてコンクリート中に存在すると、不動態被膜が部分的に破壊されてしまいます。

コンクリートに最初から含まれる塩化物イオン量については、JIS A 5308(レディーミクストコンクリート)で0.30kg/m³以下(購入者承認がある場合は0.60kg/m³以下)が原則とされています。

一方、鋼材腐食発生限界濃度Climは、鉄筋位置に到達した塩化物イオン濃度に対して用いる設計上の閾値です。

旧来は1.2kg/m³が代表値として広く用いられましたが、土木学会のコンクリート標準示方書では2012年改訂以降、結合材の種類と水結合材比を考慮した式で扱うのが基本です。

塩害対策では、

・材料に含まれる塩化物量を抑える
・外部からの塩化物イオン侵入を防ぐ

この両方を意識する必要があります。

3.鉄筋の腐食が構造物を劣化させる流れ

鉄筋の腐食が始まると、コンクリート構造物は段階的に劣化していきます。

腐食した鉄筋は体積が約2.5倍に膨張するため、その圧力でコンクリートにひび割れや剥離が発生します。

劣化の進行イメージは以下の通りです。

段階現象
第1段階塩化物イオンが鉄筋位置まで浸透する
第2段階不動態被膜が破壊され、鉄筋が腐食を開始する
第3段階鉄筋が膨張し、コンクリートにひび割れが発生する
第4段階ひび割れから水・酸素・塩分がさらに侵入し、劣化が加速する
第5段階コンクリートの剥落、鉄筋の断面減少、構造性能の低下

ひび割れが発生してから対策しようとしても、補修コストが大きく膨らみがちです。

早い段階で適切な対策を講じることが、構造物を長持ちさせるカギになります。

塩害対策で押さえたい基準と海岸からの距離

塩害対策を考えるうえで、まず確認したいのが「現場がどれくらい塩害の影響を受けやすい環境か」という点です。

海岸からの距離や寒冷地特有の条件、国が定める基準を把握しておくと、対策の方向性が見えてきます。

ここでは、以下の塩害対策で押さえたい基準と海岸からの距離について紹介します。

  • 海岸からの距離で変わる塩害の影響
  • 寒冷地で注意したい凍結防止剤の影響
  • 土木学会や国土交通省が定める基準

それでは、詳しく解説します。

1.海岸からの距離で変わる塩害の影響

飛来塩分の到達距離は、地域によって全国一律ではありません。

建設省土木研究所(現・国立研究開発法人土木研究所)の「飛来塩分量全国調査」を基にした一般目安では、以下のように整理されます。

地域塩害地域の目安
沖縄・離島全域
北海道・東北の日本海側概ね7km以内
東北太平洋側・関東・北陸概ね2km以内
瀬戸内海沿岸概ね1km以内

一方、道路橋示方書では「地域区分A・B・C」と対策区分を用いて、海岸から20〜700m程度で別体系の設計確認を行います。

台風や強風時には、海岸から離れた地域でも塩害の影響を受ける場合があるため、立地条件を慎重に確認しましょう。

2.寒冷地で注意したい凍結防止剤の影響

寒冷地では、海から離れた内陸の現場でも塩害が発生する可能性があります。

冬場に道路に散布される凍結防止剤は塩化ナトリウムや塩化カルシウムを主成分としており、コンクリート構造物にとって塩害の原因になるからです。

とくに橋梁や高架道路では、凍結防止剤を含んだ水が路面から下部構造に伝わり、長年かけて塩化物イオンが浸透します。

寒冷地の現場では、塩害と凍害が同時に進行する「複合劣化」が起こりやすい点も注意が必要です。

塩害の影響を低く見積もらず、雪国の現場でも沿岸部と同等の対策を検討することが重要です。

3.土木学会や国土交通省が定める基準

塩害対策には、土木学会や国土交通省が定める明確な基準があります。

主な基準は土木学会の「コンクリート標準示方書」と、国土交通省・日本道路協会の「道路橋示方書」の2つです。

それぞれが規定する内容を簡単にまとめると、以下のようになります。

基準主な規定内容
コンクリート標準示方書塩化物イオン量の制限、塩害に対する照査、かぶり、水セメント比など
道路橋示方書塩害地域区分(A・B・C)、対策区分、最小かぶりの標準値

道路橋示方書では、部材の種類や塩害の懸念度に応じて、最小かぶりの標準値が定められています。

現行版の道路橋示方書・同解説Ⅰ共通編では、防食のための最小かぶりは構造形式と対策区分に応じて25〜70mmが標準値です。

旧版の下部構造編や個別の追加対策で90mm級の値が示される場合もあるため、実務では発注者仕様書と最新の示方書を必ず確認しましょう。

コンクリートの塩害対策で取り組みたい5つの方法

コンクリートの塩害対策は、複数の方法を組み合わせることで効果を高められます。

設計段階から施工までを通じて、塩化物イオンの侵入を防ぐ工夫を取り入れていきましょう。

ここでは、以下のコンクリートの塩害対策で取り組みたい5つの方法を紹介します。

  1. 高炉セメントなど塩害に強いセメントを選ぶ
  2. 水セメント比を低く抑えて密度を高める
  3. かぶり厚さを十分に確保する
  4. 混和剤を使って耐久性をアップさせる
  5. 表面塗装や被覆で塩分の侵入を防ぐ

それでは、詳しく解説します。

1.高炉セメントなど塩害に強いセメントを選ぶ

塩害対策の第一歩は、塩化物遮蔽性の高いセメントを選定することです。

代表的な選択肢が、高炉セメントB種です。
JIS R 5211(高炉セメント)では、高炉セメントB種の高炉スラグ分量は30%超〜60%以下とされています。

なお、市販品では40〜45%程度が一般的です。

福島県の技術資料によると、高炉セメントを使ったコンクリートは、塩化物遮蔽性や化学抵抗性が大きく、塩害に対する耐久性が高いと示されています。

ただし、初期強度が小さく中性化速度がやや大きいというデメリットもあるため、構造物の用途や工期を踏まえた選定が大切でしょう。

沿岸部の構造物では、フライアッシュセメントB種も塩害対策として有効な選択肢になります。

2.水セメント比を低く抑えて密度を高める

水セメント比を低く設定すると、コンクリートが密実になり、塩化物イオンの侵入を抑えられます。

水セメント比とは、コンクリートに含まれる水とセメントの質量比(W/C)のことです。
塩害環境では、一般環境より低い水セメント比が求められる傾向にあります。

発注者標準配合表などで採用される実務値の例は、以下の通りです。

環境条件採用例のある水セメント比
一般地域55%以下
塩害地域50%以下
重塩害地域・岩礁隣接地域45%以下

ただし、上記は全国一律の規定値ではなく、構造物種別・環境・発注者仕様によって変わります。

実務では発注者仕様書、標準配合表、設計耐久性照査を併せて確認し、高性能AE減水剤などの混和剤と組み合わせて施工性を確保するのが一般的でしょう。

3.かぶり厚さを十分に確保する

かぶり厚さは、鉄筋を塩害から守る最後の砦になる重要な要素です。

かぶり厚さとは、鉄筋の表面からコンクリート表面までの距離のことです。
道路橋示方書では、部材の種類や塩害の懸念度に応じて、最小かぶりの標準値が定められています。

一般的なかぶり厚さの目安は、以下の通りです。

環境条件最小かぶり厚さの目安
一般環境30〜40mm
塩害環境50〜70mm
激しい塩害環境70mm以上+塗装鉄筋やコンクリート塗装の併用

かぶり厚さが薄いと、塩化物イオンが鉄筋に到達するまでの時間が短くなり、劣化が早まってしまいます。

スペーサーの適切な配置や配筋検査を徹底し、設計通りのかぶりを確実に確保しましょう。

4.混和剤を使って耐久性をアップさせる

混和剤を活用すると、コンクリートの密実性や耐久性を大きく向上できます。

塩害対策で使われる代表的な混和剤は、以下の通りです。

・高性能AE減水剤:単位水量を減らしてコンクリートを密実化
・防錆剤(亜硝酸リチウムなど):鉄筋表面に保護膜を形成し腐食を抑制
・収縮低減剤:ひび割れを抑制し塩分の侵入経路を減らす

たとえば、高性能AE減水剤を使うと、水セメント比を低く保ちながらも施工性を維持でき、コンクリート内部の細孔構造が緻密になります。

防錆剤の亜硝酸リチウムは、塩害環境下で鉄筋腐食を抑制する効果が確認されており、補修材としても活用されています。

なお、「混和剤」と「混和材」は異なるものです。
混和剤は化学薬剤、混和材はフライアッシュなどの粉体を指すため、現場で混同しないよう注意しましょう。

5.表面塗装や被覆で塩分の侵入を防ぐ

コンクリート表面を覆う「表面被覆工法」や「表面含浸工法」は、塩害対策として効果の高い方法です。

主な工法は以下の2種類に分けられます。

工法特徴
表面被覆工法エポキシ樹脂やアクリル樹脂などの塗料で表面に被膜を形成
表面含浸工法シラン系やけい酸塩系の薬剤を含浸させ表層を改質

シラン系含浸材は撥水層を形成して水分の侵入を防ぎ、けい酸塩系含浸材は表層を緻密化することで塩分の侵入を抑制します。

表面被覆工法は遮断効果が高い一方、定期的な再塗装が必要です。
表面含浸工法は外観を変えず、施工後のモニタリングがしやすいというメリットがあります。

そのため、新設時の予防対策としても、既設構造物の補修としても活用できる工法でしょう。

塩害が発生したコンクリートの補修工法3つ

塩害が進行してしまったコンクリート構造物に対しては、適切な補修工法を選んで劣化の進行を止める必要があります。

劣化の程度や構造物の重要度によって、選ぶべき工法は異なるでしょう。

ここでは、以下の塩害が発生したコンクリートの補修工法3つを紹介します。

  1. 表面被覆工法・表面含浸工法
  2. 断面修復工法
  3. 電気防食工法

それでは、詳しく解説します。

1.表面被覆工法・表面含浸工法

塩害が初期段階で進行が緩やかな構造物には、表面被覆工法や表面含浸工法が効果的です。

表面被覆工法は、エポキシ樹脂やアクリル樹脂などの塗料でコンクリート表面を覆い、塩分や水分の侵入を遮断する工法を指します。

一方、表面含浸工法はシラン系やけい酸塩系の含浸材をコンクリート表層に浸透させ、撥水層を形成したり表層を緻密化したりする工法です。

両工法を比較すると、以下の違いがあります。

工法メリットデメリット
表面被覆工法遮断効果が高い定期的な再塗装が必要
表面含浸工法外観を変えずモニタリングがしやすい被覆工法より遮断効果が劣る

塩害が軽微な段階で施工できれば、コストを抑えながら長期的な耐久性を確保できるでしょう。

2.断面修復工法

鉄筋の腐食が進み、コンクリートにひび割れや剥離が生じている場合は、断面修復工法を選びます。

断面修復工法は、劣化したコンクリートをはつり取り、新しい補修材で断面を復元する方法です。

施工の流れは以下のようになります。

  1. 劣化部分のコンクリートをはつり除去
  2. 露出した鉄筋の錆を除去し、防錆処理を行う
  3. ポリマーセメントモルタルなどの断面修復材を充填する
  4. 表面を仕上げて必要に応じて表面被覆を施す

塩害が進行した場合は、はつり除去したコンクリートに残る塩分を取り除く「脱塩工法」と組み合わせることもあります。

劣化部分だけでなく周辺も含めて補修することで、再劣化を防げる施工がポイントです。

3.電気防食工法

塩害が広範囲に進行し、鉄筋腐食が著しい場合は、電気防食工法を検討します。

電気防食工法は、コンクリート表面に陽極材を設置し、鉄筋に向かって防食電流を流し続けることで腐食反応を電気化学的に抑制する工法です。

主な方式は以下の2種類に分けられます。

方式仕組み耐用年数の目安
外部電源方式直流電源から強制的に防食電流を供給20〜25年程度
流電陽極方式亜鉛やアルミなどの陽極材との電位差で電流を供給10〜15年程度

外部電源方式は通電量を調整できるため多様な腐食環境に対応でき、流電陽極方式は電源不要でメンテナンス負担が軽いという特徴があります。

CP工法研究会などの資料では、電気防食工法の通電量は0.001〜0.03A/m²程度とされており、構造物の供用期間中は継続的な通電と定期的な点検が必要です。

初期費用は高くなりますが、長期的に塩害の進行を確実に止められる工法でしょう。

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コンクリートの塩害対策に関するよくある質問

Q. 塩害対策と凍害対策のコンクリートの違いは?

結論、塩害と凍害は劣化の原因と対策の方向性が大きく異なります。

塩害は塩化物イオンによる鉄筋腐食が原因で、対策は塩分の侵入を防ぐ方向に向かいます。

一方、凍害はコンクリート内部の水分が凍結膨張することでコンクリート自体が劣化する現象で、対策は水分の侵入抑制や空気量の調整がメインです。

寒冷地で凍結防止剤を使う橋梁などでは、塩害と凍害が同時に進む「複合劣化」が起きるため、両方の対策を組み合わせる必要があるでしょう。

Q. 塩害対策は農業の畑にも応用できる?

結論、農業の塩害対策はコンクリートとは異なる仕組みのため、そのまま応用はできません。

農地の除塩では、真水による洗脱、排水条件の改善、必要に応じた石灰質資材の投入を組み合わせます。

農林水産省の「農地の除塩マニュアル」では、炭酸カルシウムや硫酸カルシウムが資材として挙げられ、施用量の目安は100〜200kg/10aと示されています。

資材は土壌pHや土壌条件で選定が変わるため、果樹園地では石こう、酸性硫酸塩土壌では消石灰や炭酸カルシウムが適する場合もあります。

コンクリートの塩害対策が「塩分を入れない」方向であるのに対し、農業は「土の中の塩分を抜く」方向と覚えておくとわかりやすいでしょう。

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